柔らかい刺 2007/07/14 (Sat)

武骨な指が、桃の表面を滑る。
「熟れ過ぎて店にはもう置けないそうでな。」
するするとはだかになった果物をナイフが削いでいき、桃は一口サイズの切れに化けて皿に納まる。
そのうち幾つかに楊枝を刺し、屑桐はおそろしく柔らかい表情をした。
病気の弟に、桃を食わせてやる。
たったそれだけの事で、蕩けるような目をして笑う。

胸の内をじりじりとざわつかせる感情。
嘲笑う見下した笑い顔がチラつく。自分がしてみせるような、自分に向けられるようなそれと、目の前の光景との圧倒的な差。

妙な言い訳をして世話を焼く八百屋も、風邪をひいた弟も、後で母親の病室に持って行かれるのだろう桃も、全部が憎たらしくて愛おしい。
手に入らない物ほど欲しくて欲しくて仕方の無い性分を恨めしく思う。

物欲しそうにでも見えたか、見当違いに差し出された桃を無視して屑桐の指を囓る。

「…何をする。」
「お前が悪い。」

俺の物にならないから。



++++
「早くよくなって下さいss」
を、書こうとして玉砕。
風邪を題材に屑も帥も病気じゃないなんかをかきたかったんすけどどうにもダメデスネー あっはｗ

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えぇと。私信ですが。

先日は応援ありがとうございました。おかげさまで一応無事に終了しました。
そちらも早く治られますように。お大事に。