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「屑桐?」
飼い猫を膝に乗せて、客人は寝入ってしまったようだ。ベッドに凭れてはいるものの、床に座って生き物を足に乗せていたのでは落ち着いた姿勢とは言い難いだろうに、疲れているのだろうか。
「険しい顔しちゃってまァ…」
眠っている時くらい「あどけない顔」になったりしないものだろうか。寄った眉根と真一文字の口元に笑ってしまう。相手の時間的余裕を考えると笑っている場合でもないのだろうが、ぎりぎりになるまでは起こす必要もないだろう。
脚の猫は乗せたまま、起こしてしまわないようにゆっくりと、頭を支えて倒してやる。クッションを枕にしてそっと手を離すと、言葉にまではならない抗議らしい寝言を呟いたが、結局横になったままでおとなしくなった。
体勢が変わる途中で避難した猫が、不機嫌そうに尻尾を揺らしている。居心地のいい膝もクッションも取られてしまっては恨みたい気もわからなくはないが、恋人の膝を気前よく貸してやっているのだからその不満はきいてやらなくとも罰は当たらないだろう。膝の所有者が小動物を愛でたがるのを妨害できないだけだと言われてしまえば分が悪いが。
ベッドからタオルケットを拾って屑桐にかける。ぺたぺたとその髪を撫でる。ふと、そうしてやった方が眠りやすい気がして、額を覆っている布を外して髪を解いた。
布を外すのに頭を持ち上げようと屈み込んでしまうと、その場から動くのが惜しくなってしまった。
黒い髪に指を通して、撫でるように梳く。険しい表情は変わらない。眩しいのかもしれない。
自分の頭で影を作って覗き込む。繰り返し髪を梳くついでに、瞼を撫で、頬を撫で、顎に触れて、唇を重ねたのは殆ど無意識で。
寝息には何も変化が無い。
そのまま色々悪戯してやってもいい気がしたが、寝かせてやるつもりだった事を思い出して、辞めた。
「オヤスミ。」
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当方の帥仙は総じて、寝込みを襲うことに抵抗が無い。です。恥を知れ。