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帥仙が編み物をしている。一定のリズムを刻む編み棒の音が耳に心地好い。
始めた頃は時折本を確認していたのだが、最近模様編みの棒運びも覚えてしまったらしい。
毛糸の球が縮んでセーターが形になっていくのを眺めるのは面い。それが自分のものになるとなれば尚更だ。
「屑桐。」
「なんだ」
「ヒト観察してないで自分の事やれ。」
「…せめて眺めていると言ってくれ。」
「ヒト眺め回してねーでとっとと写せ。」
「…。」
せめて、でなければ「愛でている」と言って貰いたいところだったのだが。
渋々ノートに視線を戻して、楽しいわけでもない試験勉強を再開する。
大体、勉強が楽しいのであれば試験休みに恋人の部屋まで来てノートを借りるなんてつまらない真似をする破目にはならないだろう。
「誰が恋人だ」
「キサマだ」
編み物だとか折り紙だとか、頭をあまり使わない作業の間になら隣に居る相手の気配を窺うこともできるだろうが、勉強となると集中しなければいけない。
積極的に会話を楽しむような性質ではなくとも、どうせなら横に居るという事を意識していたいと思っても罪にはならないだろう。机に集中してしまうとそれがままならない。
「…つまらん。」
再びぼやいてみたが、今度は突っ込みは来なかった。帥仙は編み物の合間にも隣を気にするつもりをい無くしたらしい。
尤も、これだけ早く編んでいれば当たり前かもしれないが。
「つまらん。」
++
「…ッ、できた!ざまァ見ろあのクソ女っ」
ミシンか何かのように高速を保って動き続けていた手が止まるまで、教科書もノートも途中で投げて帥仙を眺めていた。
本気で集中していたらしい帥仙は、角度を変え位置を変えしてそれこそ観察か何かのように眺め回しても一言も何も言わなかった。
「どうだ。」
「…数日で一着編んだとは思えん出来だな」
「だろう。ヨシ行ってくる」
「何処へ行く」
「あァ?お前まだ終わって無ぇの。仕方無ぇ、鍵これ。ポスト入れとけ?ノート持って帰ンなよ。」
「…何処へ」
「賭けリミットまで半日あんだよ、こーなったらラッピングまでやってやる」
更に数日後、賭け金と毛糸代でプラスマイナスゼロにしかならないと言って膨れた帥仙が、上品に包装された件のセーターをメッセージカード付きで放って寄越した。
「オレにくれると言わなかったか」
「お前んちのモンになるだろ」
「…どうせなら俺に編んでくれてもいいと思わないか」
「お前デカいから無駄に毛糸かかる」
「ならいっそ自分のものを編め」
「自分の手作りなんぞ着れるか。寒ィだろーが」
持って帰った包みを弟は跳ねて喜んだが、小学生が着るには少し大きかった。帥仙は余り小さいものだと賭けにならないからだと言っていたが、後になってから急いで編むと目が縮むものだと思い出した。
ゆっくり編めば自分に丁度くらいの大きさになったかもしれない。
++++
「一週間以内にまともなプレゼント用セーターなんて編めるわけ無い」by帥仙姉。
俺も無理だと思います。
コメントありがとうございます。
注意書きを怠っていて申し訳ありませんが、当ブログはどっぷりオタク界に浸かった人間が管理しております。
あまりそういった趣味とは係わり合いの無い方とお見受けしましたので、メールアドレスへのお返事は遠慮させていただきます。
ブログの運営はとても面白いものですので、趣味の合う方を見つけて楽しまれる事を祈ります。
ここまででなんかドン引きされてる気がしますが、あんまりネット上にメアドとか出さない方がいーと思います。ヘンなメールとかもくるのでお気をつけ下さい。
…あーなんか、こういうコメント返ししかできないのが居るとオタクてみんな暗いやつなんだと思われるんだろーな…面白い人も沢山いますよー私がハズレなだけですよー。