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空を裂くおとがする。

平均して一日にだいたい一度、多ければ日に何度か、空を往くそれは轟音を立てる。
手を伸ばせば届く距離に居る相手に声は届かなくて、あと十数秒もすれば過ぎて行くだろう騒音の塊を見上げた。
濃い強い夏の青を裂いて、銀の腹が鈍く光る。

「帥仙、」

いつの間にか、がならずとも周りの音が聞こえる程遠ざかって居たそれから視線を剥がして戻すと、赤い目が真っ直ぐとこちらを見据えて居る。
まだこの地に慣れないのだろう屑桐は、あれを見る度にこうして、いかにも不可解だという顔をする。
卒業してから毎年のように踏んでいるだろうに、珊瑚の土も、汐風になぶられる海岸沿いも、空を裂いて往くあの音にも、こちらの方が先に慣れてしまった。
景観やら風習やらを楽しんでいる場合で無いというのも理由の一つではあろうが、まるで自分のホームは母校のグラウンドであるかのように、慣れない侭。勿論それは、ふぃとした瞬間瞬間の事でしか無いけれど、その度思わされる。嗚呼こいつは無駄な所ばかり変わらない、と。

「乗ってみたいのか。」
「いや? オレらの乗るものじゃあない。…乗って善いものとも思わねーよ。」
「…そうか。」

見上げた顔が物欲しそうにでも見えたのだろうか。睨み据えるように細めた目は、解り難いが行くなと言いたいだけだろう。相変わらず失敬な輩だ。
笑ってくびを振ってやったら、眉間の皺がゆるりとほどけた。
もっとこう、破顔とかしてみせろ。したら気色悪がってやる。

「それに、オレにはこいつがあるし」

傍らのタンクを叩いて、空の青を写し込んだような水平線を見やる。跨がって促してやれば、大人しく後ろへ乗った重みで愛車はギシと沈んだ。

マシンで走る事やエンジン音に魅せられた者の多くが、否、そうと限定せずとも「元 男の子」の殆どが、パイロットに焦がれる。毎日のように機体を見上げる機会がある事に、不思議な感覚を覚えないかと言われれば否定はできない。

でもオレは変わる。

地に足を付けるなどとはまだ言わないが、空を往く程の高さはもう欲しくない。
無駄にしがみついてくる荷物を乗せて濃さの違う青二つの間を走るのに、今以上の何かは要らないし。
…今の所。



++++
せっつかれたので更新してみた(笑)
つーワケでメール受けとりましたーありがとうございます。

タイトルと最初の1行だけ掛れた作成中メールがいつまでも送信BOXに残ってて邪魔だったと言えば邪魔だった。

もっとこう、ファンタジイなのか現代日本なのか解んない感じに仕上げたかったんですが、できんかった。
一応補足までに。沖縄の上空は毎日戦闘機が轟音立てて飛んでくものなんです。
煩さは高度によりますがね。
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