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犬猿だか帥猿だか的な物体を書こうとして失敗した後があったので、発掘してみた。
(途中で切れてます。)
猿(視点)は書けないなあ…と、いう話。

「ね、アンタ骨っこでも持って来たんスか」
 
合宿の途中から突然割って入った眼帯男は、その日のうちに気付いたら犬っコロに懐かれていた。
あの目付きの悪い性格の悪い頭の悪い口の悪い犬がなんだってそんな簡単に腹を見せて転がったのか気になって、こちとら20分くらい真剣に考えてしまったわけだ。お蔭様で頭の回線がオーバーヒート起こしそうになったので、素直に当人に聞いてみる事にした。
20畳もある畳の部屋にそれぞれが布団を敷いて、押し合ったりへし合ったり、風呂に行っているうちに取っていた場所が無くなったりしているような時間だ。はじめのうちこそ同じ学校同士でばかり固まっていたのも、最近はばらけて、どちらかというと外野手同士だの強打者同士だのでコロニーを作っているその中で、途中参戦の投手はどことなく、もなく、ひとりだった。
話しかけ難いような、却って逆なような。
 
「…ァア?」
 
氷水よりドライアイス水に近い視線は火照った脳みそを冷やすには十分だったが、オレ様一寸後悔したぜ。
とりあえず土下座してみるか、いやいや反撃するならヅラとミニスカにチェンジだろう此処は、三つ編みよりはこのおにーさんには金髪巻き毛かなとコンマ3秒の間に決定しかけたところで、すぱこん、と良い音立てて後頭部にハリセンがヒットした。
この、なってないスウィングは犬っコロ。
 
「なーにしゃーがる!」
「流石阿呆猿、カラッポな音だな。」
 
プ、とわざとらしい失笑を零しやがるので、三つ編みで姫抱っこで腕に飛び込んで撫で回してやっているうちに、質問のあった方はボール磨きに戻ってしまっていた。
大部屋の雑魚寝布団は本来なら俺ら下っ端高校の聖域で、華武様々のご投手サマがここで寝ますよな空気満々なのもちょっとオカシイ。さりげなく一番寝心地のいい、クーラーが効きすぎも効かな過ぎもしない壁側を陣取っているのは流石なのかもしれないが、それにしたって色々訊きたい事はあったので、その騒動?の10分後にも、30分後にも、何度か話し掛けようとはしてみたりしたのだが。
バッティングフォームについて牛キャップからお小言的愛の指南を受けたり、飯の足りてないメンバーで炊飯器を強襲しに行ったり、誰かの持ち込んだあはんうふんな雑誌を枕投げに乗じて窓から外へ捨てる振りをしたり熱湯に落ちた先輩をアイスノンの山に埋めたりしているうちに、接触を図り損ねてしまった。
 
横から何度も槍の入った俺としては、気付けば海賊船の宝箱を狙って幾年も経過した冒険者にも近しい心情になっておりましたわけでして。
 
「っとぉおああー!めし獲ったり、天誅!」
「ッ!?」
 
風に当たりに出た外で、自販機の明かりにふんわかした菫色が照らされているのを発見した俺が、思わず匍匐前進で気配を殺して後ろから忍び寄った所で、あんまり責められる謂れは無かった筈だ。
天然パーマのつむじに手刀を叩き込んだ時の達成感といったら、元はと言えば何故その宝箱を狙っていたのだったかなどちょっとどうでもいいかなもう、ってイイ顔になってしまった程。しかし数十分前と変わらない(いや、もうちょっと温度下がったかも?)ドライアイスが、浸る間を与えてくれなかった。
 
 
「何か用か。」
 
プシュとプルタブを引き抜く音に続いて、スポーツドリンクが喉へ流し込まれて行く。
思いっきり表情で訴えてみたが、俺の手持ち以外からコインは出てくる筈も無く、ぬるいベンチに並んで腰掛けているのに水分の恩恵にあずかっているのは片方だけという現状。
眺めていたらただでも軽い財布を苛めてしまいそうだったので、俺は数十メートル先の合宿所の明りを眺めていた。
ジメっとした風が、頬やうなじを撫でて行く。
 
「あー、えーと」
「左投げ同士だからな、フォームの修正に口出ししてやった。」
 
口を開く前に用件が済んでしまったら、その後何を如何したらいいのか。
一番初めの質問を未だに覚えていて下さった事は光栄ですけれども。
 
「………アー…えーと。」
「何、犬飼はお前のもんなの」
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感想
僭越ながら、なのですけれども。


『目付きの悪い性格の悪い頭の悪い口の悪い犬』の言い回しがめっちゃ好きです。
いかにもなカブさんの文章ですね。このリズム感が本当に好きです。
でもこの猿君は頭良いです。なんだかびっくりです。
思考がずれていく様が淡々と語られていて何だか可愛いです。
迷惑野郎というよりも不思議ちゃん。

「ね、アンタ骨っこでも持って来たんスか」
の一言で質問の意図を精確に解釈してみせたりだとか、先回りにして答えてしまうあたりがお兄ちゃん体質というか
屑桐さんで慣れきってしまった姿というか。
ああ素敵だ帥仙さん。
しかしよっぽど華武メンツと一緒に寝るのが嫌だったんですかね というか屑桐さんがもう帰っているのならば屑桐さんが嫌なのかなと解釈するところですが。
そして牛尾さんはどこで寝ていらっしゃるのでしょう。

帥仙さんの猿君のこの先の行く末が気になります。
誰か助けてあげてー(笑)
A 2008/12/23(Tue)00:57:49 edit
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